幻の三重塔

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それは約13年前の日曜日の午後であった。生来散髪嫌い
の私が仕方なく散髪に出かけていた。いつものように退屈な
時間を過ごすのかと思うと少し憂鬱になりながら、おきまりの
漫画雑誌を読み10数分が過ぎようとしていた。床屋の主人
は私の先輩にあたり、釣り好きな気のいい人で趣味が一致
することもあり、鮎の友釣りの師匠であった。

その彼が小さな声で耳元で囁いた。

「最近悩んでいることないん?」

「え、別にないけどなあ?どして?」

「ほな、ええんやけどな。できとんよ。」

「はあ〜?何があ?」

「ほなけんな、いわゆる10円玉××よ。」

ぎょっ!

「心配事とかあるとようなるんやけどな。気ぃつかなんだ?」

「どこにあるん?え、ここ?あら、ほんま(^_^;)」

特に悩んでいるという意識は無かったので、しばし内省に入る。
と、その時今設計をしている三重塔が頭に浮かんだ。確かに、
悩んでいるといえば、相当に悩んでいたが、これは仕事上の事
なので、いわゆる悩みとは思っていなかったのである。

しかし、よくよく考えてみると木造建築、それも寺社建築の最高
峰ともいえる三重塔を知識もなく、独学で格闘している最中であ
った。当時は独立前で勤務先の轄ъ囃z事務所に所属し、所長
より、伊賀八幡神社の設計をまかされ、その後手水舎を設計し、
それが縁で伊賀八幡神社となりの蜂須賀家由来の國瑞彦神社
の設計が終わった段階で、徳島の名刹瑞厳寺で和尚さんが生き
ているうちに三重塔を建てたいとのことで、建設会社の監督さん
から、「今度は三重塔をお願いします。」と声をかけてくれたので
あった。

しかし、一つだけ注文があり、三手先でなく、建設費の関係がある
ので、一手先でやれないだろうか?ということであった。三手先だ
けでもその構造等充分に理解できていない状況で、引き受けたも
のの、さっぱり分からず八方塞がりの状況であった。たぶんその時
の葛藤が原因ではないだろうか。

その後も満足がいかず、AMOビルの設計にも着手したので、立面
図を画いたままで、ずっと放ってあった。ついに業をにやした和尚さ
んは京都の宮大工さんに頼んで現在の三重塔ができた訳である。

これで、この話はお仕舞です。そうです、その時の図面が今も事務所
に飾ってある「幻の三重塔」なのです。

期待してここまで読んで頂きまして有り難うございました。

 

三重塔 正面図 手書き

三重塔パネル デザイン展に出展したもの

背景、雲は般若心経をデサインしている。デジタルカメラの性能が能力不足で不鮮明で申し訳ありません

後書

三重塔を勉強して日本建築古来に伝わるデザインの処理を自分なり
に体得したと思います。その経験はAMOビルの設計で実験してみま
した。寺社建築を勉強して最初に気がついたのは、全ての神社仏閣
で、一つとして同じものは無いということでした。それまでは、神社は
神社として全く同じものに見えていたのです。目の前の物を見ずに、
心に映し出される映像を実物として見ていた事に気がついたのです。

まさに、心ここにあらざれば見れども見えずという事なのでしょう。
このことを積極的にデザインに応用するということも学びました。
私にとってまさに、デザインの修養道場でした。
もし、毛綱先生に会う機会があればこの話をしたいと思っています。
きっと先生は「ほら、あんたお釈迦さんが三重塔はまだ早いってい
うことや。」と笑いながらおっしゃる姿が目に浮かびます。

 

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伊賀八幡神社

私が小さい頃、この神社は火災により焼失しており
ここが神社の境内であるという事も知らず、堀でザリ
ガニ採りをして遊んでいた。悪友は蛇を釣ったり、蛙

に2B弾をしかけたり、我々子供の遊び場であった。
奇しくもこの神社を施工した叶エ組の若社長も同じ
年であり、この神社の近くに住んでいて火事を目撃
したという話を後で聞いた。

たまたま、毛綱毅曠氏が徳島に講演においでになった
時に懇親会の席でその話をすると、「それはな、神さん
がザリガニ採りってる中の子供の中でな、こいつに建て
さしたろって、その時に目つけたんやな。」とおっしゃり

ました。神さん系の話では話しが盛り上がり、氏曰く
「僕のしっとる人でな、三重塔を見たら人に見える人
がおるんやな。人体を感じるらしいで。」それが、伏線
なるとは夢にも思わず...

これは作品としては、轄ъ囃z事務所の作品となります。

 

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國瑞彦神社

少し社寺建築が分かったかなというところです。
初めは雲をつかむような状況で、寺社建築、日本建築
の本を必死で読みました。1間が建物によって違うとい

うことを知ったのも勉強の後。1枝が基本になるというこ
とも分かりました。日本建築では、最後に「木割を過信
してはいけない。全てはあなたの感性で」とあるのを読
で衝撃を受けた。

これも轄ъ囃z事務所の作品です。

 

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